足掛かりに堅調な動きを見せたが、大豆が年明けから中国年内のトウモロコシ相場は引き続きレンジ内の動きに留まったまま越年となりそうだ。
17/18年産の米国産トウモロコシの単収は最新の需給報告で175.4ブッシェル/エーカー(BPA)と昨年の史上最高水準の174.6BPAを上回ると見込まれている。
11月の需給報告で史上最高水準の昨年を上回る単収が発表された際は、市場に大きなサプライズであった。
12月に発表された生産高を基に主要生産国の単収を計算すると、米国の175.4BPAが圧倒的に高く、次いで南半球だが緯度が米国のコーンベルトと似ているアルゼンチンが128.7BPA、中国97.0BPA、ウクライナ88.5BPA、ブラジル85.5BPAと続く。全世界平均は90.0BPA。米国が突出して単収が良いことが分かる。米国と中国のトウモロコシの作付け面積はほぼ同水準であるが、中国の今年の生産高見通しは2億1500万トンで米国の3億7000万トンの6割にも満たない。
米国がここまで単収を伸ばす理由としては、GM種子、農業技術の発達(密植等)、交配種(ハイブリッド)の開発などが挙げられるが、今年の場合、ハイブリッドによって種子能力が上がり養分の吸収が良くなり密植に耐えられるようになったこと、また、春先までの降雨で多少作付けが遅れたがその分土壌水分が潤沢であったことが大きいのだろう。密植が進むと表土が狭くなり土中水分の蒸発が抑えられるため、夏場に多少干ばつ傾向が強まっても、受粉期さえうまく乗り越えられれば、好単収が確保できた。米国産トウモロコシは農薬耐性、害虫耐性のGM能力に加え、ハイブリッドの開発により干ばつ耐性も上がっていると言えるだろう。
トウモロコシの干ばつ耐性が上がっているとはいえ、それは潤沢な土壌水分を確保した上であり、来年のトウモロコシ相場を予想する上で、米国の冬季の降水量及び土壌水分に注目していきたい。北半球の冬季(1-3月期)に発生するラニーニャ現象では米国では南部が少雨傾向になるとされている。今週21日に米NWSが発表した3か月予報(図参照)でもその傾向が示されている。
ただ、コーンベルト中域から東域は降水量は多めとなっているため、主産地が充分な土壌水分が確保できれば、今年のような豊作が再びとなるのだが、干ばつモニターでは3月までプレーン南部の他にイリノイ州、アイオワ州の一部、プレーンズ北部の両ダコタに干ばつ傾向が残るとされており、注意は必要だ。また、現在作付中の南米の動向ではアルゼンチンは、冬季の乾燥傾向で土壌水分が不足しこれまで作付が遅れていた。最近の降雨で作付ペースは回復しているが、ブラジルの二期作コーンの作付面積が減少するとの見方も併せ、今年は南米の生産は落ち込む可能性が高いのではないだろうか。
一方、来年の生育以上に、世界的なトウモロコシ相場に影響を与える可能性があるものとして中国のエタノール政策を挙げる。中国政府は今年9月、自動車の燃料としてエタノールの利用拡大を促す方針を決めた。現在、11の省区でエタノール混合ガソリンを試験的に推奨し、年間260万トン(中国のガソリン全体の5分の1)のバイオエタノールを消費している。中国はこれを2020年までに全国に展開し、年間1000万トンのバイオエタノールを消費するという目標を打ち出している。
中国には約1億トンのトウモロコシ在庫があるとされているが、中には収穫から2年~3年を経過した「陳化糧」と呼ばれる不良在庫が多く含まれている。この消化にバイオエタノール拡大が有効と考えられていると思われる。上記の政府目標が順調に進むとすると、トウモロコシに換算すると向う三年、年間約800万トンのペースで需要が拡大することになる。これは今年の米国の生産高の2%強に当たる。もちろん中国の国内のエタノール生産がトウモロコシ由来のみであるわけではなく、また、これまでもブラジルや米国からエタノール輸入というという形で補われているが、中国の需要純増分は世界のどこかでその原料が消化されるということである。
今年は米国の史上最高単収更新の大豊作ということに目を奪われがちであるが、米国の単収の伸びは0.5%に過ぎず、世界全体の生産高は3%減少、期末在庫は10%減少、在庫率は21%から19%に低下している。18/19年度の世界統計はさらに在庫及び在庫率低下が進むであろうという点を生産国以外の国は重視するべきであろう。