環境保健法一部改正法律案が最近公布され2019年6月13日から施行される予定なので、その内容をお知らせ致します。
当該改正法律案は、最初発議の時は、一般国民が有害化学物質等を使用して製造された製品の危害性を容易に知ることができない点を考慮して、事業者が故意または損害発生を認識した程度、環境有害因子の有害性等によって被害額の10倍以上の金額を賠償するものとする内容が入っていましたが、国会議論の過程で他の法律との公平性等を考慮して、被害額の3倍以下を賠償するものとする内容に議決されました。
既存の環境保健法には、事業活動等によって生じた環境有害因子により他人に環境性疾患を発生させた者に被害補償の責任を負わせる規定がありましたが、今回の法律案の改正により事業者の責任を強化したことにその意義があると理解されます。
1. 事業者の損害賠償責任の範囲を被害額の3倍までに拡大し、免責事由及び消滅時効等を製造物責任法に従うものとすることによって、免責範囲を明確にした
2. 身体に累積して健康を害する物質によって発生した損害または一定の潜伏期間が過ぎた後に症状が現れる損害に対しては、その損害が発生した日から10年間賠償責任を負うものとした
特に、上記のような環境保健法は、既存の環境汚染被害補償責任及び救済に関する法律(以下「環境汚染被害救済法」)と共に適用され得るという点に注目する必要があります。環境汚染被害救済法では、事業者の環境汚染被害に対する総賠償責任限度を定める代わりに、環境汚染被害と損害発生との因果関係を推定するものとしており、環境保健法では因果関係の推定規定はないが賠償範囲を被害額の3倍に増やしている点に差があり、今後被害者がどの法律を根拠に損害賠償を請求するかによって対応策も異ならせる必要があります。
改正された環境保健法は、2019年6月13日から施行される予定ですが、改正法律の施行の前に発生した被害に対しても改正法律により「3倍賠償請求」が可能かについては何の規定もおいていないため、今後これに対する法的争いが起こる素地もあります。